定価:2500円(税別)
版型:四六判上製カバー装
頁数:216頁
ISBN978-4-86629-000-0
神ありて緑野の秘密印したり雲母鷹の羽蜘蛛の巣の上
時満ちて杏に小さき月生りぬ長き日暮を千々に熟れゆく
峰尾碧さんの歌は奔放で幻想的だ。しかし表記はごつごつした印象が強い。画数の多い漢字が愛用され、引用歌に見るように名詞が多いせいもあるだろう。字面からみる全体の印象はまことに固い。そのような固定的・集約的な外見と流動的・拡散的な内容との絶妙なバランスに、この作者のなみなみならぬ歌の才能を見る。 佐佐木幸綱
『森林画廊』より3首
ほとほ
蠧毒もて野とつながれり月の夜の鱗粉の疹闇に熟る
あ くち
f字の孔月の形に開きし頃契りし言葉その唇を衝く
みそとせ ふ に
砂遊び見つつありしが束の間に三十年経りて肖た子の遊ぶ