本書は、四十余年の間、倦まず弛まず努力し続けた作者の第一歌集でさる。写実を基本に据えた衒いのない表現によって、日々の歓びや哀しみ、周囲の自然の姿への感動が素直に歌われている。対象に向ける善意の眼差しが、読者の心にすんなり伝わってくるであろう。
―帯文 野地安伯
『薔薇は静かに』より5首
淡淡しき冬の光に包まれて薔薇は静かに命閉ぢゆく
娘の名書ける歯ブラシそのままに洗面所にあり新盆近し
直線は曲がれぬものか時時は曲がりたくなる高速道路
方哉さんあなただけではありません大根煮ても私も一人
ここがまあ市街地なるや夏草の繁れるままにあまたの空き地
判型:四六判上製カバー装
頁数:204頁
定価:2500円(税別)
ISBN 978-4-86629-115-4