小林幸子歌集『六本辻』

歌を旅する、歌を探し求める旅人よ!

 

「辻」という場所にはこころひかれる。「四辻」は、ほの暗い印象があるが、六本の道が放射状に伸びている「六本辻」はまぶしい青空のしたにあるようだ。

「六本辻」という抽象の辻を出で入りしながら、もうしばらくうたいつづけてゆきたい。

「あとがき」より

 

『六本辻』より5首

 

あやとりはたのしきものか群青の川を取りあふ姉とおとうと

 

ひたぶるにひとを思へばゆびさきに吸いつくやうな青空の月

 

思ひ直し思ひ直して死にゐるひともあるらむ白さるすべり

 

一杯だけビールを飲まうおとうとよ だれも死者とは知らない町で

 

六本辻のラウンドアバウト幾回りしてゐるうちに人は消ゆるも

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:222頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-126-0