判型:四六判上製カバー装
頁数:188頁
定価:2500円(税別)
ISBN978-4-86629-148-2
短歌の世界へ出立した十八歳の少年は、すでに対象を見据える確かな目と、それを支える柔らかな感情の働きとを兼ね備えていた。
第一歌集『いちょう樹』上梓以来五十余年、ひたすら詠み継いできた日常生活の哀歓が、奥行きのある作品となって、ここにある。
野地安伯 帯文
蟻地獄の底へ底へと滑りつつひたすら探る上向きの岩
怖ず怖ずともう一杯のスープ乞うなじむ間もなき職場の昼餉
根府川の駅を過ぐれば静かなる夏の光に海広がれり
午後の陽を顔いっぱいに受けながら妻か買物下げて上り来
乳足りて笑まう赤子は囲まれぬ母とその母そのまた母に