小熊正明歌集『石を蹴りつつ』

定価:2500円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:176頁

ISBN978-4-86629-150-5

著者の作品は、おしなべて格調が高く、毅然としてつねに屹立している。ローマン性に富んでひろがりのある作品は、深みゆく老いをしかと見つめて揺らぐことがなく、多くの人を包み込んでくれるような温かさがある。―林田恒浩 帯文

 

雛菊はわが誕生花 ほのぼのと小さき炎のごとく生きむか

 

抱負とはなつかしき言葉を聞くものか答えんとして齡さびしむ

 

人待てばいつも降りくるさらさらとさらさらとアダモの雪が

 

国滅ぶ嘆きをうたふ杜甫の詩 覚えあり八月の炎天の夏

 

ゲルニカはピカソの怒り馬の目に大き涙を流させてなほ

 

友逝きて師もまた逝きて荒涼の野に晩秋の鵙高鳴けり