園田昭夫歌集『少しだけ苦い』

判型:四六判上製カバー装

頁数:188頁

定型:2,500円(税別)

ISBN978-486629-162-8

 

十七歳の神無月こそわすれまじわが生き方を決めし浅沼さん

 

比例選挙名簿にわれの名載りて人の妬みの深さ知りぬ

 

ふたつみつ疫病かかえ古稀となる明日は明日同行二人

 

悪性の腫瘍と告げる意志の顔励ます声は翳りをもちて

 

先生ほど九条を愛した人はいない九条歌人岩田正罷る

 

 

 

歌集『少しだけ苦い』には、苦労を重ねた父母、伯母の被爆による隠れるような暮らしなど、戦後の暮しの位相、若く経験した魑魅魍魎の政治の世界、そして知った啄木の短歌。一度は「政治」と手を切り、それらを振り切るために出た遍路。これらはこの歌集の根幹にかかわっている。短歌への出発時からの歌のモチーフ、社会との関連性、幻滅して政治を離れてなお社会矛盾の多さに再度運動へ戻ってゆく日々を通し太らせた軌跡が色濃く歌われる。それは戦後を生きた園田昭夫の内面を語っている。                    ー田村広志 帯文ー