安富康男歌集『叙景歌』

定価:2,750(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:224頁

ISBN978-4-86629-217-5

 

「都会の自然という題材を選んで、心情を伝えられるような短歌を」と述べる著者の住む築地周辺は、かつては外国人の居留地としてにぎわっていた。

四季折々の周辺の情景をひたむきに詠いあげていて、その作品にはまさしく衒いがない。

若き日に藤村を学んだという著者の、ますますの活躍を祈ってやまないものがある。

林田恒浩 帯文

 

 

この部屋に緑を置けば秋は来ぬ汝(な)は逝き去りて独り身の午後

 

武甲山鍾乳洞の石筍はなみだ溜めおりしんしんとして

 

武蔵野に馬頭観音おわしいて真冬に蒼く草はそよげり

 

秋の陽が水面に映える隅田川連なるビルをきらり鼓舞して

 

百年の歴史閉じる日来たりしか築地市場に朝霧は満つ