桂保子歌集『春は樹木語』

定価:2,500円(税抜)

判型:四六判上製カバー装

頁数:210頁

ISBN978-4-86629-243-4

深い緑の葉ですね名告つてくれないか春は樹木語わかる気がする

 

逃げ水を追いかけるように、この小宇宙を彷徨する一人。

わたしの声が聴こえるか?息遣いが伝わっているか?

さまざまな物象は、かなしみの相を見せながら明滅を続ける。

そう、逃げ水とは此の世から彼の世へとつながる命そのもの。

 

 

 

 

ちひさな林檎サイズの天秤ゆふかぜを載せて光れりちひさな皿が

 

みづいろの水族館に二時間を過ごせばさしみ身に鰭なきは

 

眠れずに棚より取り出す星座図の北斗の柄杓に水あり光る

 

縄文の人らも水辺に眺めしや恋螢ひとつまたひとつ飛ぶ

 

たれもみな過ぎてゆくひとたれもみな消えてゆくひと さくら葛湯を