定価:2,750円
判型:四六判上製カバー装
頁数:208頁
ISBN978-4-86629-270-0
この世の人情の温かさと辛さをユーモアに包(くる)んで詠いあげた、微苦笑の軽気球。とどこおりない洒脱な詠み口は、作者の人間愛と人生肯定の強さを証し、時折のぞく悪戯(いたずら)ごころが大らかな人柄を偲ばせる。
60年の作歌歴を凝縮した熟成の第二歌集。
(千々和久幸)
『草木瓜の咲く家』より5首
草木瓜(くさぼけ)の返り花咲く生垣に虻がひすがらきて遊びおり
取り壊す噂ながるるビルの階老人が夕陽背にのぼりゆく
乾反り葉を踏んでいこうかかさこそと乾いた音がこの靴は好き
フェイス・シールド百円也ふたつ買う夫にひとつ私にひとつ
陽の落ちて闇にとけゆく遺跡群ほーろろんと蜥蜴(とかげ)が鳴けり
巻き尺をのばしビュルンと放ちやる何もなかった一日(ひとひ)の終わり