荻本清子歌集『冬蝶記』

定価:2,750円(税込)

判型:A5判上製カバー装

頁数:184頁

ISBN978-4-86629-276-2

圧巻の第12歌集!

 

さびしい心には

さびしい調へが宿る。

神羅万象を見つめつつ

身近な日常に心を寄せながら。

 

生命の機微に触れてゆく。

花や鳥や蝶を詠む。自在に。

 

やがてまた、

どこかですべてが耀き始める時を願いつつ。

 

ああ、孤独な形象の連なり、いとおしいいのちの重み。

 

 

 

 

冬蝶記』より5首

 

閉じし目にうっすら泪湧くような夏日のなかに立ち上りたり

 

胸奥につねに湛える真清水の尽きせぬほどに書きつづりゆく

 

花の息わが息合わす真夜中にうつし世のものなべては眠る

 

野の枯れ葉敷きて眠れる男おり 天下住処に臆すなき生

 

見えがたき世を見つづけし眼差しの潤むかなしさ人も老いたり