渡邊忠子歌集『風のこもりうた』

定価:2,860円(税込)

判型:A5判上製カバー装

頁数:238頁

ISBN978-4-86629-284-7

 

第一歌集。

 

あやまたず生きよと赤きはまなしの実の一粒が宙(そら)をみてゐる

 

あやまたずに生きようとすれば人は苦しむ。

苦しみをありのままに受容した時、あらたま子頃の自在が生まれる。

はまなしの赤い実の一粒、その佇まいから励ましの声を聞きとめる作者。生きることの真実を求めてやまない歌人の澄んだ眼差しに詠まれた536首。

 

 

 

『風のこもりうた』より五首

 

芍薬の花のくれなゐ瓶に活け部屋に充ちくる寿(ほ)ぎごと佳(よ)ごと

 

霙降る富士の溶岩(ラバ)原濡れそぼち野武士の様(さま)に工夫ら戻る

 

千年の後に繋がむ命かも椎の実踏めばしひの実のこゑ

 

里とほく煙のなびく一処(ひとどころ)老いても母の居るあたたかさ

 

詠ひつつ癒えてゆきたし点滴の雫ひとつは命の冬芽