林三重子歌集『桜桃』

定価:2,640円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:184頁

ISBN978-4-86629-308-0

こころの裡にひろがる街。

さびしい光の街並み。

その光をそっと掬い取るように歌を詠み継ぐ。

 

たとえば単調な日常の風景や人々の暮しなどに、豊かで純粋な詩情を注ぐ。それが歌のかたちと信じつつ。

 

 

 

 

『桜桃』より五首

 

小さなる脇屋根にさへ瓦あり雪積む村の人のゆたけさ

 

ひそやかな恋のごとくに開きゐる茗荷の花のうすき黄の花

 

潮鳴りを聞きたしと日々に思へども今朝は鴉のこゑを聞くのみ

 

きさらぎは優しく生きむ青空の隈なく光りて北の風吹く

 

柿若葉青葉になりて過ぎながら硬くなりゆく思考さびしむ