原口嘉代子歌集『飛鳥』

定価:2,860円(税込)

判型:A5判上製カバー装

頁数:224頁

ISBN978-4-86629-337-0

 

第一歌集!

 

君よりの長き手紙を読むやうに炉辺(ハース)にひとり炎見つむる

 

曽祖母も祖母母我も張り継ぎて障子よ清し百年の家

 

紀の国を初めて旅し木と水と石より成れる土地と知りたり

 

 

名詞が多く、なかんずく固有名詞が多い歌集だからだろう、めりはりがきいて輪郭のすっきりした歌が多い印象である。歌集には、家族をはじめ多くの人名が歌われ、多くの地名、多くの具体的事象が歌われている。あくまでも具体的な点が特色である。さらに私が注目したのは、作者の好奇心の強さと、行動力である。縄文杉を見るためにわざわざ屋久島まで行った歌、髙橋真梨子の最後のコンサートに行った歌などがあって驚かされた。

 

--------------------------------------------------------------------------------------佐佐木幸綱 帯文

 

 

 

 

<引用五首>

 

屋久島の真青の海を胸張りて直線にとぶ飛魚の群

 

秋植ゑの葱すんすんと伸びあがる春雨降らす空に向かひて

 

ひもすがら古本屋街歩きにき一冊の本とラドリオの珈琲

 

廃線の転轍機ギと動かして幻の汽車来さしめむかな

 

腕組みてかの月見台に立ちをらむ文届けかし雁に託せば