藤澤幸男歌集『はる』

定価:2,420円(税込)

判型:四六判上製カバー装

頁数:152ページ

ISBN978-4-86629-343-1

欲しいのはしずかなちからこの冬の発語としての初雪を待つ

 

<「栞」より >

 

「しずかなちから」とは具体的に何なのか、と読んでゆく時の読者の期待を良い意味で裏切って、この下句には確かな存在感がある

            ーーーーーーー河野美砂子

 

雪を作者は嫌っているわけではない。むしろ心待ちにしているのだ。初雪を「冬の発語」と捉えるところに雪への愛情が滲んでいる。

            ーーーーーーーー松村正直

 

 

 

<引用五首>

ひと筋の蜜のようにも細りつつ濃さを増してゆく真冬のこころ

 

わたしからさびしい馬が立ち上がり吸われるように雪へと消えた

 

どか雪に埋め尽くされた道が開き北國新聞三日分くる

 

墓を終い生家を終い少年のわたしを終いふるさとをしまう

 

鉛筆で<はる、春、悠(はる)>と書いてゆく罫線の畝に種まくように