誰でも短歌を作っていくとぶつかる疑問の数々。
むずかしく考えることはない。できるだけたくさんのいい歌と出会うこと。そして、こんなふうに読み解けばいい。じっくりと味わえばいい。
現代短歌を牽引し続ける歌人の、明快にして核心をえぐる短歌説法!
現代短歌講座
破調の歌とはなにか
字余りの話をしよう
リアルな表現について
若い人の歌について
連作のつくり方について
毎日かならず一首
講演とインタビュー
辞書を楽しく使う方法
私の出会った歌人たち
よい歌の条件を考える
愛の歌とはなにか
新しい歌と古い歌
3・11以後歌は変わったか
目次より
四六版並製 2800円•税別
図書館に結城市史読めば戊辰の役に切腹せしとふ曾祖父の名あり
三日月橋を渡る夕ぐれわが顔に生き写しとふ祖母を思へり
生涯を紺屋に励みて貧しかり父の遺品の藍甕六つ
確かなる寝息たてつつわが腕に抱かれゐし日よ風のごと過ぎき
わが携帯に孫のアドレス書き込みて未知なる世界のまた一つ増ゆ
『緑花水源』『花千里』『絽の衿』の三歌集とそれ以後の作品から主に家族に関わる歌を選び抜粋収録。
四六版並製カバー装 1800円•税別
夫という同僚と今日を海におり青き時間を抱きしめていつ
健やかなその頃のこと高き塔建つを言いたり遠き眼をして
おそらくはわが生のかぎりつかうらん角の薬匙ははつかにひかる
東京湾沖航く船もゆったりと世紀を停めているかにみゆる
昭和ごと銀河の涯へゆきたるや消えし操車場の貨車 無蓋車よ
どのような過去があろうと水時計明日へ春の透く水流す
夫婦であり、薬局を営む同僚である夫という存在の発病、闘病、そして、その死。重い状況を詠みながらも、どこかあたたかくどこか清々しい空気が感じられる。
鈴木英子•解説より
四六判上製カバー装 2500円•税別
うらうらにくれなゐにほふ桃の坂たれかを送り誰かを待ちゐき
鷺草の花の白さよ飛ばざればジュラ紀にあてて手紙書きゐる
多摩川が今し産みたる大き卵水面にぬらり満月匂ふ
思ひ出は椿の森に落ちてゐむ木洩れ日の斑を一人踏みゆく
わが裡の曠野を駆ける白き馬銀河の果てまで駆け抜けて行け
桃の坂ーその坂はどこにあるのだろうか。移ろいの坂、無常の坂、どこにでもあるようで、どこにもない異界の坂。匂いたつ浪漫性が上質の言葉としらべとを獲得し、人の世の生死の意味をじっくりと問い続ける。
四六判上製カバー装 2500円•税別
十年の時間は過ぎぬサンフランシスコに紙飛行機かふわりと着地
別れれば独りで歩む背を見つつ母はひたぶると思いくるるか
オレンジのグラジオラスは君のようなぎ倒されてる台風ののち
歩む道は息子とわたしに違いあり秒針どどどと傾き進む
石を投げ石が消えゆくところまで歩いてみよう それから それから
辛く重い過去を秘め持ちながらこの歌集の風景はけっして暗いものではない。日本とアメリカを往復しながら、日本語と英語を往復しながら、明るく軽やかに短歌のつばさをはばたかせている。作者にとってこの古い日本の詩の形式は、こころのスケッチのためのこの上なく親密で、なくてはならないツールなのだ。
小池光 帯文より
四六判上製カバー装 2500円•税別
朝影を踏みて出でゆき夕影を踏みてぞ帰るこの身響(な)らずは
幼年の還らざれども噴泉はみづからのみづ浴びて飽かずも
わたつみの葡萄酒色に流るるをホメロス盲目のゆゐといふ説
あられもなき歎きもせむかはかなはかなおなじ身丈のこすもす抱きて
今われを済はむひかりいづべにぞ言葉は星の数ほどあれど
亡き人を見むうつし世の空としも澄むにはたづみ冬の夕べを
歌の根源には、詩という大きな宇宙があり、それを支える「空」があり、「海」があり、「砂丘」がある。この世の大極的なところを常に見ていたのである。
安森敏隆•跋文より
四六判上製カバー装 2500円•税込
猫の子を猫っ可愛がりしておれば命とはこんなに暖かいもの
危ないよ早くお行きと待っている山鳥親子が車道横切る
水に浮く月をごちやごちや掻き混まぜて水黽たちの響宴続く
耳奥の蝸牛が老いて聞き取れぬ言葉車窓の風さらいゆく
花びらのひとつひとつに書けるなら百万べんも寂しい寂しい
猫語にて何か訴うる孕み猫雨ほそぼそとしぶく夕暮れ
血より濃いこの赤が好き 一輪の椿咲くまで机に置きて
狐が走る羚羊が飛ぶ。梟が鳴く亀が歩く。蛍がひかる大きなトチカンジョが好物の栗の木を食う。そんな自然ゆたかな郡上大和で、猫語や子猫語を自在に聞き分けながら歌を詠む。歌の源郷に連れてゆかれたような、豊かな気持ちそして懐かしい思いを味合わせてくれる歌集である。
佐佐木幸綱
四六判上製カバー装 2500円•税別
来る日も来る日も遠い空からふってくる雪は真夏の夢にふりつぐ
初市に買いたる新車しろがねのトッポめんこいわたしの馬こ
山になり獅子になり弓になるヨガのポーズを終えて人間に戻る
胸の丈越えてふりつむこの雪を仏陀もイエスも踏みしことなし
フロマージュケーキのようになめらかな無糖の白が広がる雪野
いつかとは翅もつことば淡青の空は無数のいつかを仕舞う
雪が真夏の夢にふりつぐという下の句には驚いた。雪は一年中ふっているのだ。横手の人の心には。少なくとも佐々木さんの心には。雪は白。白鳥も白。雪の大変さを言いながら、白を愛しているのだ。
伊藤一彦•跋文より
四六版並製カバー装 2300円•税別
今日は少し疲れてゐるのハロウィンのカボチャのように笑つてみせる
沈黙の時の間に逃げ込めばシャドーグレーに黄昏れてくる
温かき飲み物売れる自販機の身内のやうな親しさに佇つ
工事場の乾いた闇の点と線繋ぎ合はせてゐるバリケード
手袋のままで握手をするときの皮膚感覚に二月過ぎゆく
鉄色の夜を帰りきて掌に除菌のソープ泡立ててをり
神職の身にある三澤吏佐子が、長い沈黙を破って、『遺構』以後の世界をここに繰り広げる。混沌とした「今」を生きる者のひとりとして、揺れつつ軋みつつも世情を俯瞰するその目差しは鋭く、そして優しい。〈シャドーグレー〉は光が強ければ強いほど深く濃くなる影の色。それは現代社会を象徴しているのだ。詩心の深化が際立つ。
野男•時田則雄
四六判上製カバー装 1800円•税込
庭土をわたしの裡を木々の葉をまづかに濡らせり初あきの雨
かすかなる音にふり向けば地に転ぶ椿の紅の未だ鮮し
ご詠歌を唄ふ鈴の音も揃はせて心ひとつになりしひと時
かくのごと終はありたし真白なる沙羅の花落つ清らなるまま
子に孫に継がれゆくらむこの寺も花咲く木々も吾らの思ひも
花鳥風月、山河草木すべてが、渡邊さんの自然と一体化していて順直な作品となっている。
より美しく洗練された品格と相俟って、風に光に、山に、その瑞々しさは雅びやかといってもよいだろう。
勝山一美(序文より)
四六判上製カバー装 2500円•税別
服部幹子『花びら餅』
花びら餅に新春祝う母と吾かく睦み来し幾歳月を
一夜明け清しき正月雪積みて初穂飾りに雀の群るる
松井香保里歌集『胡蝶の夢』
岐阜蝶は寒葵の葉を食み育つしぶきその花葉陰にひそと
奥美濃の明るき山路に巡り遇ふ春の女神の岐阜蝶の羽化
円子聿歌集『ひびき』
角ひとつ曲がる街路の花水木春めく風にやさしさを添ふ
うす曇る春の霞に花水木幾つ街路を紅に染む
山岡紀代子歌集『みすずかる』
木遣歌社に木霊し樅の木の依代と立つ八ケ岳背に
拝殿の四方を囲める御柱寒の蒼空に凛とし立てり
A5版上製カバー装丁 2500円•税別
身めぐりを踏みかためをりし肢萎えの犬のいばりが新雪に濃く
逃げられぬまま水の星に身をゆだね雪にけぶれる原発みをり
ともなふは風ばかりにてたよりなく足のしづまぬ凍てし雪ふむ
しもづきに入りて這ひずり草ひけど終らぬがまま雪に埋もるる
小樽運河の昏みにゆらぐ斜の灯に浮かび乱るる雪のはなやぎ
どうしようとも雪は雪
だが北の大地を埋める白は
幻白さながら心に残る
どのように雪に従うか
その応えは歌のなかにある
福田龍生 帯文より
四六判上製カバー装 2500円・税別
ほたる坂、われ人ともにゑみかはすそれぞれの眸に蛍やどして
蛇行せる川海ならず淡水の湖へとそそぐ面を伏せて
天上よりひかりを牽くか膚清く直き佇立に杉の木立は
逢ひたくば来よとふたより冬桜雪片ほどの儚さに咲く
天球の春まづしけれど蕗の薹ああわが血よりさやに息づく
「出来得れば、よろこびや希望、そして美しいものにめぐり逢いたい」(あとがき)という作者の思いが呼び込んでやまない世界は、雪のようでもあり、白鳥のようでもある。否、もっと根源への希求・・・。
四六判上製カバー装 2500円・税別
ひらひらとひらひら残り葉そよがせて冬木は氷の華になるべし
樹の陰に微睡み樹皮の臭いくる初夏の風に身を預けおり
人も虫も葉裏に翳り生きゆくを愛しきことを思いいずるに
かがやきて言葉が飛翔するときの山なみ夏の雲を追い越す
星空の広がる野面に飼い犬と仰ぎ見し銀河今に澄みおり
おおらかな心で森羅万象を見つめる眼差し。
見るものすべてが歌の言葉となり、
しらべとなる。
ゆっくりと成熟してゆく
宇宙の果実のように、気高く、清浄に。
四六版上製カバー装 2500円•税別
花びらがそれぞれ灯りを返すので夜の桜はこんなに白い
フライパンに玉子の白身伸びていき遠いどこかの半島になる
こんなにも天と大地は繋がりたいと思っていたのか降り止まぬ雨
ふるさとのことを聞かせてと言ったあと女は山ごと男を抱く
この先に家があるはずと辿りゆく真夏の道のやがて消えゆく
夕暮れの半ば開いてる交番に入っていくのは秋風ばかり
まぼろしを視る。いやそれが現実なのかも知れない。こころの裡に見え隠れする風景も、年とともに変幻自在の相を濃くしていく。歌が冴える。心がたかぶる。
四六判上製カバー装 2500円•税別
洗面器に水の輪生れて娘とわれの同心円にありにし時間
生れ月四月の雨は桜雨音なく降りて喉を濡らす
本日のわが寛容は何グラム銀の秤のしづかに揺れて
核汚染進む地球にみどりの葉こころのかたちの桂を植ゑむ
窓際にカットグラスを並べ置き天のひかりを育まむとす
いつしか歌が祈りのかたちとなっていく不思議さ、自在さ。
やわらかで、時には硬質の抒情をもって、何者かに刃向うように、
あるいはいたわるように迸り出る歌の大スクリーン。
鮮やかに一世界を抉り取る作歌世界!
四六判上製カバー装 2600円•税込
四つ目垣に翅を休める秋あかねふいにゆばりす夕焼けの空
働きし手チャルダッシュ弾きし手我慢の手硬直する手を握りしめたり
秋明菊は風に揺れいてひとりゆく夫亡きあとのわれの坂道
筑波よりのぞむ八溝山の盆地霧たなびく里を真綿に包む
雪明りにほのかにみゆる雛の面昭和をともに生きし雛たち
作者は実に自由にのびのびと歌っている。しかも歌材は豊富で変化に富んでいる。としてもだれもが経験する日常•生活の範囲を出るものではない。こういう歌の累積こそ、個性的と言えるのかもしれない。たのしい歌集である。 岩田正
四六判上製カバー装 2500円•税別
ひとたびは滅びを言はず 烏座の星の砕ける絵はがき届く
真っ赤なる林檎を捥げばその後を空気ぽつこりくぼみてゐたり
オクターブ掴み熱もつ指先のたどりゆくなり雲の輪郭
張りつめる冬の硝子のこころゆゑ健やかな頃のあなたに帰る
大切なものから記憶失ゆくか欅に風の船がきてゐる
高村典子さんの歌には、人間という存在の根を悲しませるような痛切なひびきがある。ひたすらな凝視や思考の中から生れる言葉には、いま対きあっているものの窮極のところをうたいあらわすほかないという、一種、崖っぷちに立つような澄んだ心がある。作者を取りまく身近な題材にも、その言葉の世界は広く作品は痩せていない。作者の独特の個性に期待するところは大きい。
馬場あき子帯文より
四六判上製カバー装 2500円•税別
君の住む街を通りて行く先はモネの「睡蓮」咲く美術館
一枚の板を彫り抜く職人芸「ほたるぶくろ」を吾は求めぬ
スプリング•エフェメラルと人の言ふ春の妖精しなやかに咲く
アンネの薔薇咲いてゐるとか二人して探しゆくなり初夏の教会
藍色の小花を集め咲く紫陽花 その花の名は集真藍(あづさあゐ)とか
集真藍という漢字に広がるイメージは、とても美しく、声に出して「あづさあゐ」とつぶやいてみると懐かしくなる。その言葉に惹かれ、こだわり続けた彼女の文学的な感性を私は信じたいと思います。
角宮悦子
四六判上製カバー装 2500円•税別
冬野菜つぎつぎ黄色の花咲かす畑にひとり異種として居り
ひと穴に五粒の種を埋めゆくいずれ四粒は間引かれゆくに
先長き介護の途中リュックひとつ切符一枚のひとりの旅よ
原発と風車を同時に見渡せる岬に立ちて南風受く
「赤福」を提げて戻れば夫笑う伊勢へ行ったのか次は出雲か
めぐりの広野を見わたし、周囲の力を借りながら挑んだ野菜作り。自然のゆるぎやまぬ生命力に一個の異形としての存在を実感した。(晋樹隆彦•跋より)
四六判上製カバー装 2500円•税別
音もなく土に沈みてきさらぎを弥生へ渡す雨の明るし
畑に咲くさだめなき風ある時は花摘む吾のふところに入る
仕分けゆく桃の表情 木の下に壮年の姿(かげ)顕ちてくるなり
草ぐさの結実までの物語聞くごとく居る鎌を休めて
果樹園には桃の木々、
咲き競う花々は野を桃色に染め上げ、
やがて甘い香を放つ極上の果実となる。
桃への深い愛情が歌となって、
たっぷりとみずみずしい果汁を滴らせる。
A5版上製カバー装 2500円•税別
仲秋の空を渡れる満月に話しかけたくて黙してゐたり
肩書きの無き真つ新な名刺もて月の浦区の住人となる
時刻版の落せる夏の濃き影にわたくし消してバスを待ちをり
唐突にありがたうねの美しきこゑの響き来夕さりつ方
ほぐしつつさすりつつわが掌は母の背中に甘えてゐたり
天山に積もりし雪を仰ぐごと腰低くして母を仰ぐも
吉田久美子さんの住む、福岡県大野城市の「月の浦」はまことに美しい地名である。その月の浦で家族を愛し、自然を賞でる吉田さんの歌は、謐かで、温かく、奥深い。彼女自身が地上をうららかに照らす月のように思われる。伊藤一彦
四六判上製カバー装 2500円•税別
童吹く草笛遥かヒマラヤの風にのりつつ大和へ届け
やまなみの高き所に鉄塔はもつともやさしく夕焼けてゐる
垂直のロープ掴めるわが手より冬の群青滴りやまず
遠景の焼却炉よりたちのぼる煙の色の今日はももいろ
あしびきの山の奥処に翁曳く桜の枝は芽ぶきはじむる
最後まで何もないのに何かある キャベツの快感皮剥かれつつ
青い色からは青い光。青のこころからは青の歌。青は師•前登志夫の風景の色。はるかシルクロード。天山山脈をおろがみ、遠く大和へ届けられる風。そこは仏教の聖地。生死もろともに悠久の時間とともに在る地。
四六判上製カバー装 2500円•税別
おお何と鮮やかな老鶯のソロあんずの茂みがかすかに動いた
千鳥舞ふ春用ショールすべらせて金婚式の被写体となる
蜜蜂の翅の重さに揺さぶられぶんぶん眠たき菜の花の午後
メダカ模様の夏帯締めてゆく会議水切瓦の白き図書館
輪になつて座る教室よその子も孫もわたしを渡辺さんと呼ぶ
土まみれの軍手のうへにほこほことねむる子猫は胡瓜のにほひ
築地正子に「いまが詠みざかり」と評された作者である。自由自在である。多彩である。盛り沢山である。そして何より自然体である。そんな作者の自画像が「老鶯のソロ」なのだろう。本歌集中の歌に対する自負なのだろうと読んだ。佐佐木幸綱
A5判上製カバー装 2500円•税別
はしご酒臨界越えてワープせし
宇宙の果ての止まり木にとまる
初期の作品と思われるが、宇宙的な孤独感をも纏っている。そのスケールの大きさには、驚嘆するばかりである。自在で詩精神の横溢した世界である。 光栄堯夫•跋文より
シーシュポスの呪縛断ち切りうら若きミューズの神と短歌に遊ぶ
閉ざされし「赤の広場」に雨しぶきわが青春のレーニンは杳く
ぬばたまの夢の続きか遠花火あがりてはまた音もなく消ゆ
わが裡に潜める鬼の持ちゐたるナルキッソスとふ冷たき刃
モウダメダともマダコレカラとも思ひつつ季(とき)にたゆたふ欅の古木
四六判上製カバー装 2400円•税別
うぐいすの声の聞こえてふりむけばテレビの中の六月の森
遠雷のやがてとどろに近づきて光る投網を幾たびも打つ
しぐれ来て高野の山のほのぐらき女人堂よりタクシーを呼ぶ
ひたひたと日の傾けばこの街に補聴器店のまたひとつ増ゆ
縁側に新聞読むと妻に告げあとは静かな梅雨の水底
昭和十二年「霞町七番地」に生を受けた一つの命が、戦争を挟んで生きて来た、人生の記録としての短歌。対象を決して突き放すことなく、優しく肯定的に見守る温もりが、この歌集の最大の魅力だろう。谷岡亜紀•解説より
四六判上製カバー装 2500円•税別
夕陽背に「立入禁止」の柵に立つわが影はすでに柵を越えて
カーテンの波打つさまは音もなく寄せくる老いの翳りにも似て
いつの世もやがて一人となる二人寄り添い散りゆく花を見ており
日に幾度「あなた」と呼ばれ飽きもせぬ何杯も飲む煎茶のように
梅の木の枝低くして鼻先に香りほのかに春を呼びくる
末本短歌は難しい言葉は一つも使われずに、読者に負担をかけず、誰が読んでもよく分かる歌ばかりである。しかし、一見単純なようで、深い味わいがあり、生の、そして老いの哀歓が翳りを伴って、深々と胸に沁み入ってくるのであるー光栄堯夫•跋より
四六版上製カバー装 2300円•税別
十代に夢あきらめし八十路のひと通信講座で絵画始める
髪型の似合ふを褒むればおすましで媼は答ふ「皆もこげんよ」
下半身と上半身を別々の境地ならしめ雨の露天風呂
歩幅の差あれど気分の差はなきか散策の歩調けふは夫と合ふ
青色はこころ癒すと誰か言ふ意図せず増えし青き鉢花
絵画を習い始めようする八十歳の老人や、記憶を喪失してでも、その声で「私」を認識してくれている媼、散髪をしてもらって若返った姿を褒めると「昔もこげんよ」と、地元言葉で返す媼等々、それらに寄せる作者の視線は暖かい。
浜田康敬•跋文より
四六判上製カバー装 2300円•税別
紅葉の深まる一樹見上げ佇つ入り日に映える明日は散る色
ここ幾日夢路にありと思ふまで桜しらしら沼辺にかすむ
娘が着て今また孫が着るわれの編みたる紺のセーター
木洩れ日を踏みて巡れる名水の流れ涼しき武家屋敷跡
燻りて抗ふ身ぬちの虫あれば気の済むまでは燻らせおかう
小川氏は倦まず弛まず、文字通り一歩一歩着実に詠み続けてきた。本書の作品に見られるような、一件地味な作風•作品の底に漂う詩情は、長く精進を重ねた、偽りの無い成果である。
野地安伯•序文より
四六判上製カバー装 2600円•税別
青空はひたすら青きゆゑかなし母は言ひたり死の前の日に
父の無き子に生まれたる我が父はわれら姉妹の父で在りたり
をさな児の目線に添ひて屈み込む児もかがみこみ水仙を見る
うつむかず空を見上げよ冬すみれ母の愛せしむらさきの花
今日咲かう今日こそ咲かう冬薔薇は陽のぬくもりを全身に受く
お粥食み歩きて笑ひ時に泣く小さき命よ 健やかであれ
堀越照代さんは「この五年の間に、母が旅立ち、後を追うように父が逝き」とあとがきにに書いている。この歌集は両親の魂に対する供養の一冊に思える。よき両親に育てられたことの感謝が他の人びとへの愛情になっていることを読者は本書を読みながら感じるであろう。 伊藤一彦
四六判上製カバー装 2500円•税抜
にんげんは必ず死ぬと告げられて地球の出づる月の平原
入口は出口なるべし診察室の扉のなかは真つ青な空
青ぶだう紫ぶだう水晶のごときしづけさ死者のいきざし
この島をえらびて棲みしわれの子の胎にありにし日のごとき海
花ゆれて夕暮あましこのくにを愛するものら野をわたりゆく
苦しみ、悩み、かなしむほどに歌は異形の輝きを見せる。大和吉野、近江、沖縄•渡嘉敷の風土との邂逅を経て。前登志夫にもっとも近い詩的磁場で、今なおこの世に他界を見続けている。
四六判上製カバー装 2500円•税別
削ぎ落とし筋骨のみなるチェーホフの散文の簡 短歌にぞ似る
英国に〈目的なき塔〉なるが所々にあり余分なることまた文化なり
かなしみは溢るるほどだが溺るるはさらにかなしく蔵ひて生きむ
花は地に落ちしあとからが本物と或る画家の言葉忘れがたしも
紫陽花の蒼なくば梅雨も寂しからむ麦酒に枝豆われに我が妻
チェーホフを愛しながら、大建さんは、ビジネスの世界で極限の緊張も乗りこえてこられた。むしろ、努力の陰に文学への心寄せがあったというほうが現実であろう。長年の苦労満載の体験さえ、志を貫いてのちの創作姿勢に生かされている。…今野寿美
四六判上製カバー装 2500円•税別
伯母ケ峰の一本だたらも杖をつき天上の紅葉見上げてをらむ
美容室の大き鏡の中にゐる二上山雄岳の前にすわれり
水色の空は螺旋に高くなり夏も終わりへと動いてをりぬ
開け放つ三階の窓に入り来たる蜻蛉ありわれは嬰児を抱く
背景宮沢賢治殿、二万数千の星を運びし銀河鉄道
見上げれば月と星ありはろばろと大歳の闇に包まれてゐる
山深く分け入って出会う紅葉はこの上なく美しい。あたかも天上からの賜り物のように。かつて作者の作歌世界を「しらべがふくよかで美しく、一人の純真で、感じやすく傷つきやすい女性の修羅」と先師•前登志夫は評した。詩歌の時空にひびく清新な抒情。
四六判上製カバー装 2500円•税別
みほとけに遠き己が浴槽に両手を合はす木になりたくて
目瞑れば夢の辻たつ梅林の蕾の間に青き海あり
「わが骨は海に流せ」と口ぐせの父よさびしき白梅香る
肉叢を削ぎ落とすまでの怒りもて春の汀に脚洗ひゐる
肉塊のくづるるごときさびしさぞ赤き人参おろしつつゐて
蒼穹に紛れゆかむか青き芥子物憂きまでのこの明るさよ
先師•橋本武子とのめぐり会い。基地の街•岩国での長い暮らし。さまざまな偶然の重なりが人生であるとすれば、歌とは流れゆく河、その清冽な水を自らの乾いたこころに満たすおおいなる壺。
四六判上製カバー装 2500円•税別
岩盤浴終えて帰りのうどん屋にすっぴんのわれの啜る素うどん
目のふちを掻く快感におぼれつつ聞いていますのポーズは保つ
塩茹での刑を逃れし菜の花が廚の隅に満開となる
生き物はかくれんぼ好き鉢の下に蚯蚓、団子虫、私も入る
ミセスわたくしとは誰か
妻として母としてときに娘として。勤め人として、ときどきは〈ひきこもり事務所代表〉として。いくつもの顔を精力的に生きる多面的な生は、置き換えのきかないただ一人の「わたくし」の人生。多忙な日々の中で、自然を見つめ、人に出会い、みずからを振り返る作者の眼はつねに好奇心をたたえ、その言葉は率直で向日性にあふれている。充実の日々を、軽やかに鮮やかに刻む第一歌集。
大口玲子
四六判上製カバー装 2500円•税別
六本木、いや六本松とわれら呼ぶ若く貧しき青春のヒル
集ひきて肩組み寮歌うたはむか「燦爛夢の」淡あはし夜は
わが干支の午はなにいろの夢を見る馬の目を借りのぞいてみたい
散歩好きのレノンの幻追ひたづぬセントラルパークも再びの夏
伝説の「子消し」の罪を償ふかなべてコケシは無心に祈る
〈桜狩短歌会〉に入会してからは、七十も半ばを過ぎていたせいか、多くのものを見ておこうと、あちらこちらに足を運んだ。その折々に目にしたものをなるべく自然体で詠もうと心掛けてきた。ただその底にはいつも鎮魂の想いがあった。『レクイエム』とした次第である。ーあとがきよりー
四六判上製カバー装 2300円•税別
こうした仲間をもてることは、私たちのこれからの生をより豊かに、温かくしてくれると思う。
戦後、奇跡のようにつづいた戦争のなかった時代にも、最近は変化が兆しはじめている。
そうした時点において、本会の意義は一層重要さを増している。各自の戦中•戦後の体験記であり、戦争の無い世界への熱い祈念である本書が、会員のみならずひろく一般にも読まれ、後の世代の平和に貢献できるよう、心から願っている。結城文•序より
軍歌からラブソングへ 朝井恭子
少年のころ 綾部剛
灯火管制 綾部光芳
鶏の声 板橋登美
ニイタカヤマノボレ 江頭洋子
戦の後に 大芝貫
語り部 河村郁子
昭和二十年八月十五日 國府田婦志子
戦中•戦後の国民学校生 島田暉
空 椙山良作
確かなるもの 竹内和世
村人 中村キネ
太平洋戦争ー戦中•戦後 花田恒久
氷頭 林宏匡
記憶たぐりて 東野典子
少年の日の断想 日野正美
宝の命 平山良明
空に海に 藤井治
戦中戦後 三浦てるよ
椎葉村にて国民学校初等科の過程を卒う 水落博
夏白昼夢 山野吾郎
生きた時代 結城文
ひまの実 四元仰
廃れゆく旧道沿いの和菓子屋に今年の春を購いて来つ
黄の色の極まりて咲く菜畑に吐息のように蝶湧きあがる
昨夜も居し蜘蛛が今宵も新聞に小さく居すわる句点となりて
一日の終りの儀式「オレの足」を探して二本あるを確かむ
もう一度土を踏みたい「オレの足」ベッドの傍に靴揃え置く
歩きたかった帰りたかった「オレの足」履き慣れし靴を棺に納む
これらの作品には、詠法とか、技術を問う以前の人間の心の叫びがある。
高橋良子 跋より
四六版並製カバー装 2000円•税別
還ることあきらめたるか七夕の短冊に何も書かざる少女
苦しめる友も救へず死に近き母も救へず雪降りしきる
秀でたる一首なければわが後はただ善き人として消ゆるらむ
借財をしたたか負ふ身に牛を引き仁王立ちなり左千夫の写真
還るー嬰児へ、いや未生以前の世界へと。悲喜こもごもの日常も、世の中の激しい変化も、天変地異も、すべてはこの世に生きて歌うことのあかし。
歌誌「地中海」での長い作歌の時間は成熟を遂げつつ、おおらかで温かい言葉としらべを自らの内に呼び込んでやまない。
四六判上製カバー装 2600円•税別
この朝を始発電車の音を聞く醒めずに逝きし母のその刻
幼子の黄の傘二つ通り過ぎまた静かなり朝の坂道
海辺より道は始まる 糸杉の並木の果ての白き教会
少年は青き麦なり すんすんと母を越えたり喉仏見ゆ
父を恋う一日なりけり秋霖は石蕗の黄花ぬらして止まず
新築の家の二世帯用表札、幼子の黄の傘、少女らの他愛のないおしゃべり、閉鎖されたピアノ教室等々、どこの街にもある住民の日常生活のひとこまであろうが、中澤さんの観察に掛かると、それらが俄かに生き生きとした生命観を帯びてくる。 三井修•跋より
四六判上製カバー装丁 2500円•税別
西窓に滴る夕日倦みながら梅雨にふとれる鱧を湯引きす
『恋しらに』
色草のひかり濾したるひそかごと解けて結べる風の草占
『惑ひ』
ゆふべよりややふくらみし半月をゑのころぐさでこそぐりませう
『ゑのころぐさ』
乳色の漿にしよごれ無花果は髪を解きたるサロメを呼びぬ
『楕円の月』
わがものにならぬをのこを恋ふるやう〆張鶴を人肌で飲む
『寒の椿』
私は彼女のような才能がまだ無名のまま隠れていたことに、一種の驚きと希望を感じている。
日本の歌壇も捨てたものではない。(塚本青史•跋文より)
四六判上製カバー装 2500円•税別
不意によぎる時雨にうたれ炎なす狭間のもみじ蒼白となる
池底よりわく水あれば氷河期の浮水植物はまなうらに咲く
かえで葉の翳あやなせば含羞のおもて湧きくる峡の石仏
バラ色の未来ゆめ見しわが影のいたく小さく夜の道をゆく
鮮烈な歌集『シネマ』を遺した新芸術派の石川信雄、その実妹の第一歌集。一人旅を愉しんだみずみずしい初期作品で、のびやかに各地の風土を称える。透明な感受性に注目する。(篠弘)
四六版並製カバー装 1200円•税別
ゆけどゆけど会えぬ悲しみ露草の藍も小草も澄みゆく挽歌
ー過ぎゆき
ウィット、ユーモア、寓話性、ファンタジー。作者の比喩表現はいずれもモダンなエスプリに溢れている。作者はまことロマンのひとである。
ボルネオより復員なしし兵隊さん父と知らされ泣きし日の雨
ー歌の歩み
時代、社会、歴史のうねりと、私的家族生活とが重なる地点で歌われている。本書はいわば、そうした家族の戦中戦後史としての性格を持つ。
谷岡亜紀•解説より
四六判上製カバー装 1800円•税別
このやうに一生(ひとよ)は畢(をは)りてゆくものか暮れ急ぐそら葡萄むらさき
もういいかい何度聞いてもこたへなく鬼となりたるままに日暮れぬ
はつ夏のさへぎるものなき須磨の海あをいちめんにすつぴんの海
風花は冬の蛍か触れむとし触れ得ぬままに消えてゆく日々
さびしさのきはみは秋の晴天の昏昏と日はふりそそぐなり
混沌とした身のまわり、心のまわりの風景。次々に来る病いとつきあいながら、限られた風景から珠玉のたましいを掬い取るように歌い継ぐ。加齢とはうらはら、変若水(おちみず)のように蘇生する豊かな感性としらべ。
四六判上製カバー装 2600円•税込
メロンパンのなかはふはふは樫の木に凭れて遠き海を見ながら
生き物のまぶたはうすし目を閉ぢて春の光に充たされてゐつ
内側からてらされてゐるマネキンのからだに似合ふ浅葱の下着
棄てられぬものを入れおく缶は棺ふたするたびに別れを告げる
本当は生きてはゐない日々だから葡萄は喉をすべり落ちたり
若くして先師•前登志夫と出会う。その分厚いデーモンのような詩魂をどこかで受け継ぎながら、清新でナイーブで屈折した独自の世界を生きて、歌う。人生の陰影はいよよ濃くなっていくが、深いかなしみすら、作者のなかでは軽やかで透明なしらべへと昇華されていく、そんな不思議さ、自在さ。
四六判上製カバー装 2500円•税別
心がぼやけてなにも見えない私のどこかはんぶん出血
やっと確認できた小さな心拍 子宮はそれを愛おしむ
抱っこする私と同じ体温になりながら寝つく幼いからだ
子にひっぱられてしゃがんでみるとその高さにだけ暖かな日ざし
真っ赤なポストに一通投函 私は変わるきっと変わる
思いが第一にあって、徐々にリズムを整えていきおおよそ三十字前後の形にしていく
口語自由律短歌はたしかな詩形であり、藤森あゆ美はその中で自在に泳いでいく女性である。 光本恵子•解説より
四六版並製 1800円•税抜
くろぐろと墨塗りたるを原点となしたるはずの教科書なりき
離郷して四十数年夫娘亡し思い出ただに詰まるこの町
何も見えないこの道だけどもう少し歩いてみよう 何が在るはず
ひさかたの天の浄めの雪の花そそげよそそげ父娘(こ)の墓に
受話器置き呆れたる目につけっ放しのテレビが映す東京のさくら
教科書に墨を塗った世代が生きづらい今の時代を渾身に生きようとする歌の数々が並んでいる。教師としてともに歩んだ亡き夫、障害者であった亡き娘を偲ぶ晩年の日々。透徹した目がとらえた日常は読む者の心に響く。 玉井清弘
四六判上製カバー装 2500円•税込
若松さんは異能の人だとつくづく思う。書道で身につけてきた「こころを込めて対象に向う」姿勢。うたを貫くものは、終始変わらぬ反骨の精神であり、歌集『酔候』は、まつろわぬ魂の軌跡なのだ。 真鍋正男•跋より
四六判上製カバー装 2600円•税抜
ほうほうといのち浮き立つ春日(はるひ)なれ むらさきの鶴みづいろの鶴
ひんやりと萩の風くる夜明けがた月もうさぎももう消えてゐた
誰も居ぬちちははの家山雨して梅のあを実に酸こごる頃
雨の日は車前草もひくく濡れてをりあをいいのちの雨のおほばこ
南さんの歌はすみずみまで充実して、満ちている。どこもとんがっていない、壊れていない。さびしいさびしいと訴える歌が目に立つが、その「さびしさ」こそ充実してつやがある。 光田和伸•跋より
46判上製カバー 2500円•税別
桃色の麒麟とう名のつつじ咲く近くに寄りてしみじみと見る
本郷は母の育ちし町なれば行きかう人の肩あたたかし
再びの逢いはつかの間ひとり乗る「ひかり」6号車がら空きのまま
母居れば開けたであろうロゼワイン開けることなく年越えゆけり
抽斗しにいまも残りし父からの旅の葉書の海の碧さよ
人がいずこへともなく行き交う。
風景が黙ったままで目の前を通り過ぎていく。
そんな日常の中に「一瞬の生を輝かせよう」
と説いた先師•山田震太郎の教え。
「聖体」として結晶していく歌の数々!
四六判上製カバー装 2380円•税込
残る生を心つくして生きたしと思ひ深むるミモザの下に
共に見る人無きはさびし又すがし出て来てモネの睡蓮の前
諦めと変るこころも詮なきか水撒くサンダルが日ざしに熱し
にぎはひし宴のあとをいたく暗きわが顔電車の窓に映れり
体重き今宵は早くい寝むとす新しき花柄のシーツを敷きて
四六判上製カバー装 2500円•税別
雑音の多いラジオに耳を寄せてゐた父は叫べり「日本は負けた」
煤竹で水鉄砲をつくりくれし種夫さん艦と共に沈みき
富士湧水の源泉といふ崖下の岩間の清水を手に掬ひ呑む
休耕田にもの燃す煙は夕茜を背にして立てる富士をかくせり
恒例の野焼きの跡の黒々と富士南麓の春三月は
敗戦。戦中を生きてきた作者の内耳深くに父の叫びは刻まれたままだ。敗戦後、富士の裾野で家業の汗を流す。豊かな自然との共生の日々ながら、悲傷のしらべは深くこころに沈み入ってくる。
A5版上製カバー装 2600円•税別
彩淡く時計草咲く諸々の過去など問わぬと言う円けさに
華やがぬ身を運びゆく夢見月黄砂にまみれ花粉にまみれ
ひりひりと渇く心を温めくる小鳥は小鳥の言葉重ねて
貝殻骨何故か淋しい夕暮れはモカとミルクと少しの砂糖
人間(ひと)去りし汚染区域の里桜しずごころなく花零しいん
優雅に水面をすべる水鳥が水面下では脚を動かし続け、穏やかな流れに見える川も、その川底では絶えず浸食を繰り返しているように、人間もまた、日々心を戦がせながら営みを続けているのかも知れません。そのような思いも込めて表題と致しました。「あとがき」より
四六判上製カバー装 2300円•税別