定価:2,750円(税込)
判型:四六判上製カバー装
頁数:194頁
ISBN978-4-86629-296-0
たましいの歌集。
騰々として、この命。
天のまことに委ねる。
憂國、草莽の土として。
会津の地にあって 歌を詠み継ぐ。
歌とは志であった。
『令和』より五首
我が庭の開きし梅に淡雪の降りつぐ朝や令和二日目
現代は政治家よりも政治屋がひしめく乃木精神よみがへれ
久々に若きをみなと相合傘初夏の雨の粹なはからひ
風もなく觸りし人もなきはずに音立て崩る本の山々
散り際を知りて散るのかもみぢ葉は風もなきまま音もなきまま
冬枯れし木々の細枝見るにつけ若き細かりし妻思ひ出づ
第二歌集!
夫の他界に悲観の日々もあった。
次々に襲ってくる病を克服してきた。
先師・山名康郎に歌学びをした懐かしい日々。
世界を旅し、日本を旅し、多くのものを見て来た。
さまざまに去来するもの。
このさびしい輪廻の駅に無言で立つ。
『輪廻のひとこま』より五首
雪の降る朝はモノクロ雲垂れて竜の目に見ゆる信号の青
夢を追ふ旅の坂道ふり帰る素足のわれに夕日ひたひた
言ひたきこと言へずくよくよ帰り来ぬ傘の雫をシュッと振り切る
老後のためと始し短歌読み返す相聞歌一首だになきは寂しき
蝉のこゑもか細くなりぬわれもまた未知なる輪廻のひとこまを生く
判型:四六判上製カバー装
頁数:188頁
定価:2500円(税別)
ISBN 978-4-86629-130-7
土産わたして軽くなりたる旅行鞄に見えざるものを詰めて帰りぬ
久保富紀子さんは秋田県の出身で、今は宮崎に住む。秋田と宮崎の間をよく往復されるが、国内はもとより海外への旅の経験も豊富である。
その旅のまなざしを日常生活にも鋭くむけているところがさすが「旅行鞄」の歌人である。
時刻表通りに電車の来ることに慣れすぎて駅よ淋しくないか
伊藤一彦 帯文
『旅行鞄』より5首
旅行とは鞄に夢を詰めること温めていた「いつか」を孵し
青空にどの子の夢も押し上げて冬のブランコ錆びた呼吸す
冷蔵庫を開ける一瞬ぴたり止む庫内の会話 われは拒まれて
カシオペアと名づけてヒトが繋ぐ星五つは永遠になかまと知らず
死を悟るこころ置く夜の長からむピーターパンのもう来ない窓