名嘉真恵美子歌集『別れと知らず』

定価:2,200円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:196頁

ISBN978-4-86629-285-4

 

第三歌集!

 

沖縄をうたう。ふるさとをうたう。

 

戦争と抑圧の歴史はこの島の風土に加わってたえず何事か問いかけてくる。

その問いがしなやかな言葉と思索をもたらし、明日の光を導くことを痛切に願っている。

 

 

 

 

 

「世を捨てよ身を捨つるより」祖父の言葉思ひてゐたり豚煮詰めつつ

 

心かろく死に遠き日々蒼天にひとの生の緒ふはふはとせむ

 

日の丸を燃やす意味さへ朧にして復帰反対デモに連なりき

 

沖縄の百年の鬱土地狩りのはじまりの記憶にいきる人たち

 

アボカドの種すべりゆくするすると掴み損ふ たぶん自分を

 

 

 

 

 


渡邊忠子歌集『風のこもりうた』

定価:2,860円(税込)

判型:A5判上製カバー装

頁数:238頁

ISBN978-4-86629-284-7

 

第一歌集。

 

あやまたず生きよと赤きはまなしの実の一粒が宙(そら)をみてゐる

 

あやまたずに生きようとすれば人は苦しむ。

苦しみをありのままに受容した時、あらたま子頃の自在が生まれる。

はまなしの赤い実の一粒、その佇まいから励ましの声を聞きとめる作者。生きることの真実を求めてやまない歌人の澄んだ眼差しに詠まれた536首。

 

 

 

『風のこもりうた』より五首

 

芍薬の花のくれなゐ瓶に活け部屋に充ちくる寿(ほ)ぎごと佳(よ)ごと

 

霙降る富士の溶岩(ラバ)原濡れそぼち野武士の様(さま)に工夫ら戻る

 

千年の後に繋がむ命かも椎の実踏めばしひの実のこゑ

 

里とほく煙のなびく一処(ひとどころ)老いても母の居るあたたかさ

 

詠ひつつ癒えてゆきたし点滴の雫ひとつは命の冬芽

 

 


秋元美津枝歌集『吾れ半歩でも現役であれ………第九とともに

定価:2,530円(税込)

判型:四六判並製カバー装

頁数:156頁

ISBN978-4-86629-269-4

 

賜物の第一歌集!

 

今日生きて明日には灰となる命吾れ半歩でも現役であれ

 

朝に紅顔、夕べには白骨の身(蓮如)――。

15歳から工場でもの作りに励んできた半世紀。

さまざまな偶然が重なり歌と出会った。

慣れない工具を扱うように、師も仲間もなく一人きりで歌作に励んだ。

灰色の労働も悩みも薪と燃やし、はかないこの世の命に向き合い歌を詠む!

 

 

『吾半歩でも現役であれ・・・第九とともに』より五首

 

流れ来る三秒組み立てラインにて今日も無口で過ごす人あり

 

湧く雲に流浪の雲の重なりて秋のきざしははや空にきて

 

川上へ行くほど水は清くして色はにごりつつ郷(さと)に流るる

 

ネジまはす無意識の手に温かきいきのひと息ふれて驚く

 

吾の永年勤続祝ひのその道で解雇闘争のビラをもらひき

 

 

 

 

 

 

 


諏訪兼位歌集『若き日のヘーゲル』

 

大地に触れ、大地とともに、

とめどもなく体の中から短歌が生まれてきた。

アフリカの雄麗な景観、人々の熱いまなざしに触れ、

地質学者はこの地球をどうとらえたか、どう感じたか。

 

 

 

『若き日のヘーゲル』より5首

              せんじょうち  さんきょそん

杉むらにとりかこまれし家々よ扇状地美し散居村美し

 

若き日のヘーゲルの日記いと楽し大好物はサクランボなりし

 

地球の夕焼けなべて赤く映ゆ火星の夕焼け青く映ゆるらし

 

アフリカの鳥を語りて尽くるなし真紅の太陽サバンナに落つ

                          な

生まるるは苦しみの世に現るることダキアの民は黒服で哭く

 

 

 

判型:四六判上製カバー装

頁数:178頁

定価:2500円(税別)

ISBN 978-4-86629-122-2

 

 

 


渡邉千恵歌集『神帰月』

 

白妙の雪纏いたる里山に昔ありけり竈の煙

ひと処ひたくれないに匂い顕つ田の畦過ぎてまた曼珠沙華

 時雨きて樹樹のもみじの深みたる篠脇山荘屋根の葺き替え

もののふの風雅つらつら敷島の道を照らして古今伝授は

舞うほどに花さんさんと山里に歌の心の配らるる宵

ちり敷ける桜絨毯ふみ急ぐ昼餉ま近き穀雨の道を

聳え立つ<(かみ)(かえり)(すぎ)>ゆさゆさと七百年の静かなる呼吸

 

 

雪の里山にしずかに立ちのぼる昔の煙。こちらの田の畦に、あちらの田の畦に、かがやくように群れ咲く曼珠沙華。岐阜県の郡上大和は、東常縁の古今伝授の里として文化的な面で知られているが、長良川沿いの自然豊かな地でもある。そんな郡上大和の文化と自然を、渡辺千恵さんが、ぞんぶんに自在にうたいあげた一冊である。佐佐木幸綱

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

 


若松喜子歌集『砂嘴のソクラテス』

空翔けるテレビドラマの歌うたい子は大股に角を曲がって

忌のあした天がけるごと霧ながれ歌のことばとならず消えたり

青鷺が静止画像のごとたてり砂嘴のソクラテスとひそかに名付く

水草の根に潜りたる目高たちわが水播けば水の輪にくる

波除け石ひとつひとつに刻まるる名前のありて入江囲める

 

 

ひたむきに歌と真向かう。

歌がひそかに息づき始める。こんなにも豊かで、変化してゆく日常世界。

 

「短歌を創ることは、生きることはを、自分自身に問うこと」という先師・香川進の言葉を反芻しつつ、あるがままの自らの感性に歌を寄り添わせて詠み続ける。

 

四六版上製カバー装 2600円・税別

渡邊千紗子歌集『野の花』

庭土をわたしの裡を木々の葉をまづかに濡らせり初あきの雨
かすかなる音にふり向けば地に転ぶ椿の紅の未だ鮮し
ご詠歌を唄ふ鈴の音も揃はせて心ひとつになりしひと時
かくのごと終はありたし真白なる沙羅の花落つ清らなるまま
子に孫に継がれゆくらむこの寺も花咲く木々も吾らの思ひも
 
花鳥風月、山河草木すべてが、渡邊さんの自然と一体化していて順直な作品となっている。
より美しく洗練された品格と相俟って、風に光に、山に、その瑞々しさは雅びやかといってもよいだろう。

 

勝山一美(序文より)

四六判上製カバー装 2500円•税別


 

渡辺知英子歌集『無垢の音』

朝光の凍てし大気を融かすごと無垢なる音に鶴翔びゆけり

見上げれば桜花の暈におおわれる影をもたない午後の空間

虫の音も一音となれる静か夜に子はとつとつと未来を語る

白木蓮の限りの白を愛しむに錆いろを深めゆくものもあり

水溜りに花をこぼしてゆく風は誰が影ならん春近くして

 

一巻を通して飾らない日常から著者の生きる姿勢が見えてくる。その内面の深い思いが、時に強く、時に静かな認識として、如実に表現され、その内実を窺い知ることができる。

鈴木諄三•序より

 

2400円•税別

渡辺美智子歌集『老鶯のソロ』

おお何と鮮やかな老鶯のソロあんずの茂みがかすかに動いた

千鳥舞ふ春用ショールすべらせて金婚式の被写体となる

蜜蜂の翅の重さに揺さぶられぶんぶん眠たき菜の花の午後

メダカ模様の夏帯締めてゆく会議水切瓦の白き図書館

輪になつて座る教室よその子も孫もわたしを渡辺さんと呼ぶ

土まみれの軍手のうへにほこほことねむる子猫は胡瓜のにほひ

 

築地正子に「いまが詠みざかり」と評された作者である。自由自在である。多彩である。盛り沢山である。そして何より自然体である。そんな作者の自画像が「老鶯のソロ」なのだろう。本歌集中の歌に対する自負なのだろうと読んだ。佐佐木幸綱

 

A5判上製カバー装 2500円•税別

 

 

若松輝峰歌集『酔候』

 

川螻蛄(げら)の跳ぶ水面(みなも)は茜色となり母の育ちし村暮れむとす
字を縦に書かざる国の少年の手を執り「春(スプリング)」と書かせてやりぬ
燐寸ほどの膨らみ見せて危ふげに赤蕪は立ち風に逆らふ
白ワインのコルクを抜きて祝ふべき何一つなくグラス差し上ぐ
曲肱(きょくこう)の楽しみの域にはあらざれど醒めては飲み呑みては眠る

 

 

若松さんは異能の人だとつくづく思う。書道で身につけてきた「こころを込めて対象に向う」姿勢。うたを貫くものは、終始変わらぬ反骨の精神であり、歌集『酔候』は、まつろわぬ魂の軌跡なのだ。  真鍋正男•跋より

 

四六判上製カバー装 2600円•税抜

渡辺けい子歌集『西明り』

若葉にも似る輝きを母われに与えて少年己は知らず

てのひらに木の芽をひろげポンと打つ遠く住む子に聞こえるやうに

ゆくりなく出会ひて夫となりし君の言葉は或日のわれのこえかも

美しき言葉を話す人にあれとまづ言ひましき嫁となるわれに

老いの果てのしばしを霧の晴るるごと母に確かなることば戻り来

ままならぬ一生もよろしと九十二歳の母が今年の桜を仰ぐ

 

西伊豆の風土を詠んだ歌、

また初期の思春期の子をもつ母親の心情を詠む歌など、

佳品も少なくない。屈折した子の心に寄りそうような

母親の姿が、そのまま現在の著者に重なり

私にはインショウぶかいものだった。

温井松代•序より

 

46判上製カバー装 2625円•税込

 

渡辺松男歌集『蝶』(再版)

=完売となりました=

=第46回迢空賞受賞= 

電子書籍版は継続販売しております=

 

わが感覚すすき野のへにありしかどこのかろさ死後のごとく気づけり

吾ゆ耳の離れてぞあるそのなかにこほろぎの鳴く必死のみゆる

うつうつとせるなかにある華やぎは地中の蛇のうへ歩くかも

ひまはりの種テーブルにあふれさせまぶしいぢやないかきみは癌なのに

 

孤独なけものどもが跳梁跋扈する

異界の住民どもが拍手喝采する

 

詩歌の時空を自在に遡行し、飛翔し続ける感性の冴え

それが「松男うたワールド」!

 

 

四六版上製カバー装 二七三〇円•税込

渡英子著『メロディアの笛』

=第10回日本歌人クラブ出版賞受賞!=

 

白秋が生きた時代とは何だったのか?

豊富な資料を駆使し、その時代を体感しつつ考察した精緻にして創造的な白秋論!

 

「日本語のひびきや、愛唱性に富むリズムに耳を傾け身を任せる愉悦は、白秋の詩章が与えてくれる恩寵である。はなやかな哀韻があってもいい。」(あとがき」より)

 

四六版上製カバー装 2835円•税込

渡辺松男歌集『蝶』

電子書籍版も販売しております=

 

わが感覚すすき野のへにありしかどこのかろさ死後のごとく気づけり

吾ゆ耳の離れてぞあるそのなかにこほろぎの鳴く必死のみゆる

うつうつとせるなかにある華やぎは地中の蛇のうへ歩くかも

ひまはりの種テーブルにあふれさせまぶしいぢやないかきみは癌なのに

 

 

孤独なけものどもが跳梁跋扈する

異界の住民どもが拍手喝采する

 

詩歌の時空を自在に遡行し、飛翔し続ける感性の冴え

それが「松男うたワールド」!

 

四六版上製カバー装 二七三〇円•税込

渡辺松男歌集『〈空き〉部屋』

父も母もだれもまさぬにひかり満ちせつなかりしよ いえ ただ 花野

膝を折り休みにつかんとする木々のけはいあり淡く雨のふる夜

滅多に話さざる叔父が泣き骨壺に入らざる骨の父を砕きつ

立てるまま骨壺を抱くわが耳にとどかぬところに青嵐巻く

 

アノマトペ、比喩、アニマを駆使し、内包する

悲しみ、不安、恐れを

独自の素材を媒介にして

形象化する。

 

四六版上製カバー装 2625円•税込